世界穿孔日記

飽き性な新社会人の日記です。読書・サイクリング・デジタルガジェット・カメラ・文房具などに興味があります。

旅に出よう、日本全国好きになるまで

夏になると、自転車旅をする。
ここ3年、続いている習慣だ。

炎天下の峠越えもある。台風にやられることもある。
それでも行ってしまうのは、あの出会いがあったからだろう。
初めての1人旅。
死にかけの僕に良くしてくれた、宿の主人との出会いが。

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2年前のこと。
就活が嫌で、大学院へ逃げた。
勉強へ熱意があるわけでもないが、何もしないのはもっと嫌だ。

いい機会かもしれない。1人旅をしよう。
大学時代、夏はサイクリングサークルでの北海道ツーリングが恒例だった。
だが、1人旅は未経験だ。

もしかしたら、コンプレックスのコミュ障も、少しはマシになるかもしれない。
行きたくない気持ちに蓋をし、宿を予約した。
旅程は、2泊3日。
東京から、水上温泉を経由して日光まで行く。

だが、行く手には思った以上のことが待ち受けていた。
今回は、1番つらかった初日の夜について書こうと思う。

時期は6月の終わり、初夏。
朝7時、東京の自宅を出る。

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何回もやっているので、自転車旅のノウハウはある。
たがいかんせん、運動不足の体に150kmはキツかった。

宿まであと20kmのところで両足が攣る。
ジェル飲料を飲み、回復を試みた。

18:30、騙し騙し走り、何とか到着した。

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夕飯の時間には間に合わなかったけど、宿の人は嫌な顔一つせず歓迎してくれた。
無事辿りつけたし、宿の人も親切だしでホッとする。

夕飯は台湾から来た方が話し相手になってくれた。正直疲れすぎて食欲が無かったのだが、話しながらだと不思議と食べられる。
台湾では、空前の自転車ブームらしい。火付け役は、台湾を一周する映画が流行ったことらしい。

食後、宿の主人がホタルのいる場所へ案内してくれた。
初めて見たホタルは、思ったより小さく、貧弱だった。
それでも、独特のリズムで明滅する光は、今生きていることを主張してるようだった。
ペダルの一漕ぎ一漕ぎの積み重ねがゴールに繋がるように。
彼らも必死に今を重ねているのだろう。何となくだが、明日も頑張ろうと思えた。

ホタルの後は、主人の案内で温泉へ。
足が攣った話をしたので、疲労回復に効く湯を選んでおいたとのこと。

温泉は疲れが染み出るようで、最高だった。
もちろん、浸かるのはほどほどに。
少しでも攣った足が治るよう、何回も伸ばし/揉みほぐし/叩く。
多分、20分以上は続けたと思う。

問題は温泉から上がった後に起こった。
財布が、ない。
頭が真っ白になった。
動揺しておぼつかない足取りで、入り口・受付・脱衣所を探す。
しかし、見つからず。

数分経つと、少し冷静になってきた。盗られたタイミングを考察するに、おそらく
・受付から温泉への通路で、ポケットから落とした
・入れ違いで風呂から上がった地元ヤンキーが回収
という流れだろう。

若干涙目で主人に報告すると、
「まず警察に行こう」
「で、遺失物届けを出す」
「あとクレジット止めよう」
等、適切な対応を一緒にやってもらえた。
車で交番まで送ってくれたりと、本当にありがたかった。

さて、問題は残りの旅程2日のお金をどうするかだ。
色々あったが、そもそもまだ旅の初日。
せっかくここまで来たのだから、できることなら続けたい。
恐る恐るお金を貸してもらえないか尋ねると、快諾してもらえた。

主人にはいくら感謝してもしたりない……!

盗難諸々の手続きが終わると、後は寝るだけだ。
明日も走るのに、初日にしてダウン。
財布問題は解決したが、体力は赤ゲージ状態。

だが、しかし。
せっかくここまで主人に良くしてもらったのだ。
こうなったら、意地でもやり遂げたい。いや、やり遂げる。
そう決意し、床に就くのだった。

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結局、翌日は100km・獲得標高2000mを走りきった。3日目はヒルに噛まれ、血を垂れ流しながらも電車で無事(?)帰宅したのだが……。それはまた別の話。

さて。そんな主人の言葉で1つ印象に残ってるものがある。
それは
「こんなこと(財布盗難)があったけど、水上温泉のことは嫌いにならないでね。」
だ。
口には出さなかったが。
心の中、全力でツッコんんだのは言うまでもない。
「なるわけないじゃないですか!!!」 と。

水上のことは今も大好きだ。現在も、定期的に再訪している。
もちろん、水上だけではない。

旅をする度、好きな場所は増えていく。

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僕にとって夏は、旅の季節であり、好きな場所が増える季節だ。
時々考えることがある。このまま毎年続けたらどうなるのだろう、と。
いつか日本全国に好きな場所ができるのだろうか、と。
もしそうだったら素敵だな。

そんな、脳内お花畑なことを考えてしまうから。
僕はまた旅に出るのだろう。