世界穿孔日記

飽き性な新社会人の日記です。読書・サイクリング・デジタルガジェット・カメラ・文房具などに興味があります。

屋久島ゼロ to ゼロ:三日目

※3日目は違う文体でお送りします。
この日は、淡々と無心に歩き続けました。
精神状態を反映し、無味乾燥な文体で記述します。

三日目:新高塚小屋→宮之浦港

3:00
風の音で起きた。
目が冴えて寝れなさそうだ。活動を開始する。
テントは凍っていない。 今日は暖かいようだ。
f:id:y0my:20160818181924j:plain 朝ごはんにツナパンを食べる。

ランタン・ヘッドライトを頼りにテントを畳む。
風の唸りが聞こえるが、あまり大きくはない。密集した木々が風を防ぐのだろう。
撤収が終わることには雨がパラついていた。

4:20
f:id:y0my:20160818182235j:plain 新高塚小屋出発。
山小屋泊の人は、誰も出立していないようだ。起きている人に挨拶し、小屋を後にする。

日が昇るまで2時間。暗い中での山行に憧れてたので、テンションは上がり調子だ。

山道は真っ暗で、明かり一つない。当たり前だ。
道を見失いかけることもあるが、冷静に周りを見渡せば大丈夫。
花山歩道で鍛えたルートファインディングの成果だろう。
f:id:y0my:20160818182237j:plain 暗くて写真も撮れない中、淡々と進む。

5:20
高塚小屋到着。
f:id:y0my:20160818182240j:plain この時間になると起ている人も多い。だが歩き出してる人はいない。
日は明けていないし、当然か。

弱い雨が降ったり止んだりしている。
早くからの降り始めに、憂鬱さが増す。

5:30
縄文杉。暗くてほとんど見えない。
f:id:y0my:20160818182243j:plain ここに来るのは10年ぶりだ。前回は家族旅行だった。
来たことある場所に、少し心強くなる。何も見えないけど。

しとしと降る雨の中、歩き続ける。
夫婦杉・大王杉を通過。縄文杉周辺は木道が整備されていて歩きやすい。

5:45
徐々に明るくなってきた。
f:id:y0my:20160818181921j:plain 2時間歩き詰めだと小腹が空く。
荷物を降ろし休憩。どら焼きを食べる。
雨脚は強くなっている。本降りもそう遠くないだろう。
行ける内に行けるとこまで行きたい。
歩きながら食べられるよう、羊羹をポケットに入れる。
次の休憩は2時間後、それまで頑張ろう。

6:00
ウィルソン株到達。ハートの写真を撮る余裕は、ない。そんな暇があったら先へ進みたい。
雨は降り続き、登山道は水浸しだ。水たまりに足をつっこみ進む。

無心に歩き続ける。
マイナスなことを考えてはいけない。前に進めなくなってしまう。
経験則からして、この程度の雨なら大丈夫。
今は歩き続けることが重要だ。

7:00
大株歩道入口。
線路道が始まる。なだらかな下りに癒される。もちろん、雨・風は続いているが。
f:id:y0my:20160818182249j:plain 関節痛・筋肉痛はなく、体のコンディションは上々。
ジオラインのおかげで体も冷えていない。
生還への希望が見える。

f:id:y0my:20160818182254j:plain 大株歩道では、結構な頻度で登山者とすれ違った。
恐らく、荒川登山口から夜明けと共に登ってきたのだろう。挨拶しながら進む。

中には「どこから来たの?」と聞いてくれる人もいた。
「花山歩道から3日かけて縦走です!」と言うと「山男だ!」と返してくれた。
励まされる。
山男か。本職は自転車なのに、何でこんなことしてるんだろう(笑)

8:30
楠川別れ。
左に行くと白谷雲水峡、右に行くと荒川登山口だ。
左に折れ、白谷雲水峡を目指す。
この後、人とすれ違う頻度は低くなった。
やはり、荒川登山口から縄文杉を目指す人たちだったようだ。
(※縄文杉へ行くには、荒川登山道が一番楽)

すれ違った人数は、3桁届く程度だろうか。屋久島の人気は本物だ。
天気の悪さなんて関係なく、多くの人が訪れる。

1回道に迷ったが、冷静に地図を見返し事なきを得た。

10:00
線路が終わり、辻峠を越え、白谷山荘へ。
雨・風はさらに強くなってきた。もはや嵐と言っても過言ではない。

雨の様子:

さて、今回の縦走の究極の目的は大川林道入り口→楠川の「標高0 to 0」だ。
しかし、楠川歩道は道が分かりにくい上に滑りやすいことで有名な道らしい。
嵐の日にエスケープルートのない危険な道に入るのは自殺行為だろう。
だとすると0 to 0は諦めることになるが、背に腹は変えられない……。

白谷山荘には、休憩してるガイドさんがいた。聞くと、やはり雨の楠川歩道は止めた方がいいとのこと。
しかし、0 to 0を目指してると聞くと、
「それなら、白谷雲水峡から(舗装された道を使って)自力下山するって手もあるんだよ」
と言われる!
向こうとしては冗談のつもりだったのだろう。だが、僕としては天啓だった。よし、やろう。

お湯を沸かし、カルボナーラを食べ、はちみつ紅茶を飲む。
f:id:y0my:20160818182258j:plain 酷い雨に、さすがのゴアテックスも浸水してきた。
ショボい雨具を着てたら、相当辛いことになってただろう。
ジオラインがあるとはいえ、多少冷える。

10:50
出発。
この先、登山道入り口へ至る道は2本ある。
一つは奉行杉・三本足杉を回る蛇行ルート。
もう一つは、まっすぐに距離を稼ぐルート。
もちろん、後者の道を行く。

今日は雨が強すぎる。登山道はずっと水たまり状態だった。
休んでいる間に本降りが始まり、道は川になっていた。
登山道だが、上から下に水が流れている。

「雨の屋久島はいい」なんて寝言を言ったのは誰だ。
そいつを嵐の屋久島に放置し、数時間後にも同じことを言えるのか、問いただしたい。

小屋から10分ほど歩いただろうか。登山道が途切れ、眼前に川が現れた。
f:id:y0my:20160818182300j:plain これを越えるのは……素人には荷が重すぎる。
引き返しもう一つのルートを辿ることにする。

川の近くには、ちょうどガイドさんとツアー客がいた。黙って通り過ぎるのも不自然なので一声かけておく。
「川すごいですね!危ないんで、もう一つの道に行こうと思います。」
「もう一つの道は水没して通れないよ!宮之浦行くんならここを越えるしかない!」
「え?(°_°)」

通るしかないらしい。
ちょうど、向こう岸にもガイドさん・ツアー客がいた。
ガイドさんは客に渡り方の見本を見せている。
確かに、よく見ると縁石が(水面下に)見える……。
思い切って縁石へ踏み込んでみる。
確かに、落ち着いて渡れば大丈夫そうだ。
でもこれ、ガイドさんの見本なかったら無理だったかも……。

後で聞いたところだと、ここで流されて亡くなった方もいるようです。
雨の日は気を付けてください。無理だと思ったら引き返した方がいいです。

11:45
無事、嵐の白谷雲水峡を脱出。
f:id:y0my:20160818182312j:plain ここからは舗装路だし、命の危険はもうないだろう。
と、思ったが「宮之浦まで9km」の看板が全力で心を折りに来る。
f:id:y0my:20160818182324j:plain

舗装路に入った途端、雨が弱くなり、時折青空さえ覗くようになった。
f:id:y0my:20160818182322j:plain 生還へのご褒美?嫌味?
当然ながら、もっと早く晴れろよ!!!って気持ちしかない。

淡々と、無心で歩く。意識が体に向かないように、音楽をかける。 かけたのはこれ↓

金精峠で、死にかけのモナに力を与えた希望のBGMだ。 今回の疲労なんて、あの時のモナと比べれば全然大したことないだろう。 自転車旅では、「今日は目的地にたどり着けないかも」と思う瞬間が何回もあった。
今回の縦走はハードだったけど、絶望することはなかった。許容範囲内だ。

14:20
休み休み歩き、ついに残り5kmまで来た。
f:id:y0my:20160818182220j:plain 一回大休憩を取り、最後のパンを食べる。

残り半分も頑張ろう。荷物を背負い、歩く。

いよいよ踏ん張れなくなってきた。
惰性で歩き、脚ではなく杖で踏ん張る。
手の皮が酷いことになるだろうが、致し方あるまい。

バスが何度も通り過ぎる。徒歩で下山していると、二度見される。
乗客に対しては見栄を張りたくて、心なしか背筋を伸ばし余裕アピールする。

そして見えてくる宮之浦港。 f:id:y0my:20160818182326j:plain まだまだ距離はあるけど……。 淡々と歩き続ける。

16:10
ついに宮之浦へたどり着いた。 f:id:y0my:20160818182226j:plain ついにやり切ったのだ。足の裏は痛いし、ストックを支えた手もボロボロだ。
しかし、勝ちは勝ちだ。劇的な達成感はないけど、じわじわと嬉しさが込み上げる。

この日の宿は素泊まり民宿フレンドだ。
f:id:y0my:20160818182228j:plain ここはユースみたいに旅人同士で集まる時間があるらしい。

宿に荷物を置き、すぐに外へ。
僕にはやらねばならぬことがある。
そう、2日ぶりの風呂である。
せっかくだから最高の風呂に行きたい。
宮之浦周辺で最高の温泉と言えば……そう屋久島空港にある「縄文の宿まんてん」である!
入湯料1600円!すごい!

バスの時間的に1時間しか滞在できない。だが、風呂が最高なことは間違いないだろう。
そう、実は今日の僕を支えていたのは温泉。
気持ちいい温泉に入る、その一心だったのだ(笑)

17:20
縄文の宿まんてんへ。
f:id:y0my:20160818182229j:plain 本当に、魂が抜けそうになるほど気持ちいい風呂でした。
露天風呂を独り占めできて、思い残すことは無いんじゃないかって思った。
疲れが湯船に染み出す。体が軽くなっていく!生きててよかった!

さあ、風呂から上がったら夕飯。
宿の人に聞くと「潮騒」という店がオススメらしい。

頼むのはもちろん「とびうお唐揚げ」。屋久島と言えばこれです。
f:id:y0my:20160818182231j:plain あまりのうまさに貪り食った結果、どう美味しかったのか考える暇もなかった(笑)
これはもう、屋久島に行って実際に食べてみてください!

21:00
酒を買い、満足して宿に帰ります。
さあ、本日のラストイベント、旅人の集いです。

僕は人見知りなんで、こういうイベントの前はかなり憂鬱になります。
ただ、思い切って行けば楽しいことは経験上分かってます。

今回も、仕事で来てる釣り好きのおじさんから話を聞いたり、旅で来てる人から話を聞いたりと、楽しい時間を過ごせました。
もちろん、屋久島0 to 0を成し遂げたと言えば、褒めてもらえます(笑)
参加してよかった!

23:30
2時間ほど語らったでしょうか。部屋に戻ると、倒れるように眠りました。
4時過ぎから歩きづめだったんだもの。もう起きてられなかった(笑)

せっかく買ったコーラさえ飲む前に、就寝。